イタリアのウナギ料理とは?~名産地はイタリア中部のコマッキオ~

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イタリアのウナギ料理とは?

暑い夏がやってきた。

夏バテ防止のためには、水分をたくさんとって、ぐっすり寝て、そして、ウナギを食べること!

ビタミンたっぷりのウナギは、疲れをふきとばしてくれる私たちのヒーロー。

でも意外や意外、イタリアでは年末に食べるらしい…。

養殖ウナギが出まわる今どきあんまり関係ないけど、そもそも、ウナギの旬は冬。

日本人が夏にウナギを食べるのは、この時期に売れないウナギ屋に相談されて「土用丑の日はウナギの日」を掲げた、平賀源内のマーケティングだっていうのは有名なはなし。

当然、イタリアにはこんな習慣は無くて、ウナギが食卓に登場するのは1年の終わりの時期のこと。

クリスマス・イヴの定番料理

クリスマス・イブの定番料理

イタリア語でクリスマスは「Natale ナターレ」

クリスマス・イブは「vigillia di Natale ヴィジリャ・ディ・ナターレ」

イブの夜には、ローストビーフに七面鳥、ミートパイに、あまーいケーキ…。と、思いきや、カトリックの国ではキリストの誕生前夜。神様に思いをはせて、食事は質素に済ますらしい。

肉は絶対に食べちゃいけない。赤ワインもダメ。

この日は、たくさんの地域でウナギが食べられていて、魚料理だからっていうのもあるけど厄払いの意味もあるらしい。

ウナギの見た目が悪魔の化身であるヘビに似てるから、食べて退治しちゃいましょう、っていう発想。

南イタリアではイブの日の朝に市場でウナギを買ってきて、家でさばいて、フリットにしたりトマト煮込みにして食べる習慣がある。

日本では魚界のスターみたいなウナさんが、国が変われば扱いが変わっちゃうもんだね。

ウナギの名産地、コマッキオ

ウナギの名産地コマッキオ

コマッキオのシンボル「trepponti トレポンティ = 3つの橋」

クリスマス・イブは特別として、イタリアでは年中どこでもウナギが食べられるわけじゃない。

イタリアのウナギ産地といえば、プーリア州のレジーナ湖とか、ウンブリア州のトラジメーノ湖、そして、なんといってもエミリア・ロマーニャ州のラグーン(干潟)の街、コマッキオ。

コマッキオはエミリア・ロマーニャ州の東にあるフェッラーラ県の海沿いにある街で、イタリアでウナギといえばここ!っていう位ウナギで有名な場所。ウナギ漁で生活しているような街。

レストランではどこに入ってもウナギが食べられる。しかも、天然ウナギが食べられる、イタリアのウナギ天国。

最近では養殖も多いみたいだけど、天然ウナギの伝統を絶やさないために市や沿岸の国が管理してるんだって。

毎年9月末から10月の初めにはウナギ祭りが開催されて、各地からのお客さん相手にウナギを焼く露店がひしめき合って大盛り上がりなんだとか。

アドリア海からすぐの海辺の街の中には運河がたくさん走っていて、水路をまたぐ橋があちこちに架けられている。

橋の下をゴンドラで行き来する様子はヴェネチアを思わせることから「piccola venezia ピッコラ・ヴェネツィア = 小さなヴェネツィア」とも。

情緒のある街並のテラスで、とれたてのウナギイタリアン。ウナギが一気におしゃれな感じ。

ポー川デルタ地帯にやってくるウナギたち

ポー川デルタ地帯にやってくるウナギたち

ポー川デルタ地帯の航空写真

ポー川デルタ地帯にやってくるウナギ

イタリア北部を横断するポー川 photo by NordNordWest

コマッキオをウナギの名産地にしているのがポー川河口の特殊な地形。

ポー川はイタリアでいちばん大きな川。ピエモンテ州、ロンバルディア州、エミリア・ロマーニャ州、ヴェネト州と、イタリア北部をダイナミックに横切る全長はなんと650km以上。

日本で最長の川は367kmの信濃川だから、相当大きい。

ポー川周辺に広がる豊かな平原はパダナ平野って呼ばれていて、イタリア最大の工業地であり農業地。

そんな巨大なポー川の下流の、アドリア海へと流れる河口の地域が「ポー川デルタ地帯」。

デルタ地帯っていうのは日本語だと三角州。遠い昔に学校で習ったような気がするけど、どんな地形だっけ?

えーと、なになに。三角州とは、川によって運ばれた土砂が海に流れ出るところにつもって出来る三角形の地形のこと。

ポー川デルタ地帯は、それは美しい大自然に囲まれた地域で、湿地帯や森林、塩田とかの景観が広がっている。この一帯は「Parco Delta del Po ポー川デルタ地帯自然公園」としてユネスコの世界遺産にも登録されているんだって。

この中心にあるのがコマッキオの街で、淡水と海水がまじりあうデルタ地帯にウナギがやって来る。棚からぼた餅ならぬ、ウナギが流れてくる。なんてラッキーな。

ヨーロッパウナギの旅

イタリアのウナギは日本とはちがう、ヨーロッパウナギっていう種類。

日本のウナギよりも脂がのっていて肉厚。日本のウナギのイメージで口に入れると、びっくりするほど脂が多いらしい。

イタリア郷土料理のバイブル『アルトゥージの料理書』にも「脂分がひじょうに多いので消化にはあまりよくない」の記載が。ワインが欲しくなるに違いない。

ヨーロッパウナギは、大西洋のサルガッソ海っていう、世界でいちばん透明度が高いと言われる海の深ーいところで生まれる。

1~2年くらいして、稚魚になったら川や湖を目指して、2~3年かけて何千キロも旅して、ポー川にたどりつくウナギもいる。コマッキオのラグーン(干潟)で、10年くらい生活して、子供をつくる準備ができたら産卵のために生まれた海へ帰っていく…ところを、ごめん!捕獲!

脂がのったいちばん美味しい時期に、ありがたくいただきます、ってこと。今は数が減ってしまったけど、多いときはひと晩で150トンものウナギが獲れたんだって。そりゃあ、有名にもなるわ。

それにしても、あんなひょうひょうとした見た目で何千キロもの旅をするなんて根性ある。そういえば、サケと似た人生だけど、サケは川で生まれて海を旅して川に戻ってくるから、ウナギとは逆の道筋を旅してる。

とにかく、たくさんの美味しいウナギが獲れるコマッキオには、ウナギ料理もたくさん。50近くのレシピがあるらしい。

コマッキオのウナギ料理

イタリア語でウナギは「anguilla アングィッラ」もしくは「capitone カピトーネ」

違いはなにかっていうと、カピトーネのほうは成長した大きいウナギのこと。コマッキオのウナギはアングィッラって呼ばれることが多いから、ヨーロッパウナギのなかではきっと中くらい。といっても、日本のウナギよりは肉厚だけど。

クリスマス・イブに食べられる南イタリアのウナギはカピトーネって呼ばれることが多いから、きっと巨大なウナギなんだろうな。さばくだけでも大仕事だ。

ウナギの炭焼き

メジャーな食べ方の1つが「アングィッラ・アイ・フェッリ anguilla ai ferri」。

ずばり、ウナギの炭焼き。コマッキオのウナギ祭りの屋台で振るまわれるのも、この1番シンプルな炭焼き。

ウナギを開いて骨をとったら頭から尾までグリル。レモンと塩だけで食べる。

素材が良いから、シンプルな調理でじゅうぶん。

ウナギのマリネ

コマッキオ・マリナート

ウナギのマリネ缶 photo by Monia Mascagni

「アングィッラ・マリナータ anguilla marinata」はウナギのマリネ。

食べものを長く保存するためにマリネ液に漬けておく方法は、カルピオーネとかスカペーチェでもおなじみ。(→「カルピオーネとは?~イタリア版の南蛮漬けを整理整頓~」)

10月~12月に獲れたウナギのマリネを作っておいて、パスクア(復活祭)の時期 = 春に食べてたらしいけど、今では前菜として、1年中出されるひと品。

マリネ液は白ワインビネガーに水、ローリエの葉、そして、コマッキオの近くにある、チェルヴィアの塩田から採れる質が高くて、長い伝統のあるチェルヴィアの塩。

ウナギを獲れる時期は短いから、マリネは伝統的で、1900年代にはウナギのマリネの缶詰工場もあったけど、今は博物館になってるらしい。

ポー川デルタ地帯で造られる「砂丘のワイン」って呼ばれるDOC Bosco Eliceoと合わせるんだとか。地元の特権!

コマッキオ風ウナギの煮込み

「anguilla in umido all’uso di Comacchio アングィッラ・イン・ウミド・アッルゥーゾ・ディ・コマッキオ」はコマッキオ風ウナギの煮込み。

ブツ切りにしたウナギを、玉ねぎやトマトソース、ビネガーと一緒にぐつぐつ煮込む料理。

ウナギの脂がトマトソースに溶け込んだ濃厚な味わい。

ポイントは、ウナギを調理するときにオリーブオイルを使わないこと。ウナギ自体の脂が多いから、オイルを使うと味が悪くなるんだって。

ワインで煮込めば「anguilla col vino アングィッラ・コル・ヴィーノ = ウナギのワイン煮」に。

トマトソースを入れずに、グリーンピースを入れる「anguilla coi piselli アングィッラ・コイ・ピゼッリ = ウナギとグリーンピース」のアレンジも。

他にもある人気レシピ

炭焼き、マリネ、コマッキオ風のトマト煮込みが代表的だけど、人気のレシピは他にもたくさん。

ウナギをサボイキャベツと一緒に塩コショウで煮込む「キャベツ煮込み」とか、ロマーニャ地方の薄焼きパン「ピアディーナ」に挟んでサンドイッチみたく食べる料理も美味しそうだし…。

パスタはもちろん、ウナギの煮汁とバター、パルミジャーノ・レッジャーノで味付けしたクリーミーなリゾットも人気。

かば焼きも白焼きも最高だけど、たまにはイタリアンなアレンジも楽しいでしょ。

ウナギに添える不思議パン「パーネ・コッピア・フェッラレーゼ」

ウナギに添える不思議なパン「パーネ・コッピア・フェッラレーゼ」

コッピア・フェッラレーゼ photo by Gianni Careddu

ウナギ料理に添えられるのは焼きポレンタと、思わず2度見したくなる不思議な形のパン。(※ポレンタ polenta = 沸騰したお湯にトウモロコシ粉を入れて練り上げたもの。北イタリアの付け合わせの定番。)

それが「pane coppia forrarese パーネ・コッピア・フェッラレーゼ」。

なんでこうなったんだろう、と思わずにはいられない「x」の形。

このパンはコマッキオのあるフェッラーラ県の名産で、IGPっていうEUの制度でも特産品と認められてる、実はちょっとすごいやつ。

「coppia コッピア」はカップルっていう意味で、くるくるっとクロワッサンみたくねじって作った2つの生地を中央でつなぎ合わせる作りかたと形が名前の由来。

どうやって誕生したのかはっきりとは分かってないけど、1500年代のカーニバルのときに、フェッラーラ公爵のために作られたのが始まりなんだとか。

ラードを練り込んで焼いた生地はカリカリで、食感は軽くて香りがいい。

風味をそこなわないために家で保存するときも空気にふれないように袋に入れて、必ずその日のうちに食べるっていうのが現地の人たちのこだわり。

グリッシーニみたく生ハムを巻いて食べたり、ウナギ料理に添えられる定番のパン。

イタリアのウナギの周囲には地元の食材。やっぱイタリア料理はこうでなくちゃ。

まとめ

  • イタリアではウナギは夏ではなく、クリスマス・イブに食べられる定番料理。
  • 名産地はエミリア・ロマーニャ州のコマッキオ。毎年ウナギ祭りが行われる、有名なウナギの街。
  • ウナギが集まる地形はポー川デルタ地帯。世界遺産にも登録された美しい自然の中の湿地帯。
  • 有名なウナギ料理は炭焼き、マリネ、トマト煮込みの他、多数あり。
  • ウナギ料理に添えられるのは焼きポレンタと「パーネ・コッピア・フェッラレーゼ」。

疲れがとれない、元気がでない。

そんなときこそ、美味しい料理と美味しいワイン。

栄養補給を忘れずに。

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