アロスティチーニとは?~アブルッツォの「羊の串焼き」はひと味ちがう~

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アロスティチーニの作り方

イタリアの中南部に位置するアブルッツォ州の郷土料理「アロスティチーニ」が知名度を上げつつある。

きっかけは、庶民の味方「サイゼリヤ」の大ヒットメニューとして君臨したこと。魔法のスパイスとの相乗効果で売り切れ続出。

それまでは羊の串焼きにそんな料理名があることなんて知らなかったよね。しかも、名前がすんごく覚えにくい。

たかが串焼き、と思いきや、そこはイタリアン。

作り方、食べ方、合わせるワインまでこだわりがいっぱい詰まってたんだ!

アロスティチーニのポイント

アロスティチーニのポイントを簡単にまとめると

  • 小さなダイス状の羊肉を串刺しにして「フォルナチェッラ」という専用のグリルで焼く。
  • 伝統的には成長した羊肉を使うけど、現在は仔羊を使うことも多い。
  • 味付けは塩とオリーブオイルだけ。
  • エクストラ・バージン・オリーブオイルに浸したパンのスライスを添えて、地元の赤ワイン「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」を片手に食べる。

あれ、魔法のスパイスが無い!

それは、羊飼いたちの貧しい食事としてスタートした歴史があるから。

異国の羊飼いたちに思いを馳せれば、この夏のアロスティチーニはもっと美味しくなるはず。

羊飼いの食卓から世界へ

アロスティチーニの故郷はイタリア中南部にあるアブルッツォ州。

ここの人たちの生活はずっと羊と一緒で、その理由は山がちな地形。

イタリアを北から南に走ってるアペニン山脈の中でも、最高峰のグランサッソ山とマイエッラ山があって、州の3分の2は山なんだって。

雄大で豊かな山の風景。「ヨーロッパで最も緑が多い地域」っていうのがアブルッツォの人たちの誇り。

山でできることって羊を飼うこと位だから、昔から春には羊と一緒に山を登って放牧して、冬になったら山を下って、暖かい南の方に行くっていう大移動をくり返しながら暮らしてる。

だから、料理も羊の肉と羊のチーズを使ってるものがほとんどで、アロスティチーニは、そんな羊との生活の中で生まれた食事。

羊飼いが家から遠くはなれるときの食料って羊しかなくて、群れのなかでもなるべく年をとった羊を食べてたんだって。なんか、かわいそうな話。

だけど、羊への感謝の気持ちはとても大きかったから、骨の近くの小さな肉片も無駄にしないで、ぜんぶ食べた。

串は、野生のハーブとか葦とかの茎の部分。ちょうどいい長さのやつを見つけて、外で調理するときのためにいつも持ち歩いて、羊の肉を焼くときに活躍。

羊の肩から脚まで、ぜんぶの部位の肉を使って、すぐに火が通るように小さく切って、硬くなりすぎないように脂肪の部分をうまーくはさんで一緒に串刺しにしてたんだとか。

これに自家製パンと地元のワインっていうのが彼らの食事。

こうやって生まれたアロスティチーニは、同じ長さの串に、同じ位の大きさの羊肉を刺して作るっていうのが決まりごと。

見た目はシンプルだけど、羊との長い共存生活のなかで生まれた伝統の味。

その当時は、羊くんも、羊飼いさんも、世界的に有名なイタリア料理になるなんて思ってなかったんだろうなぁ。

アロスティチーニの作り方

「羊肉の串焼き」って聞くと、どこで作っても同じようなものができるように思うけど、アブルッツォ州のアロスティチーニは特別で、「P.A.T. (prodotto agroalimentare tradizionale) = 伝統的農業食品」っていうのに認定されている。

実は、アロスティチーニは工場で大量生産されてるらしい。でも、工場製のアロスティチーニと、地元で手造りされたアロスティチーニには違いがある。

  • 工場製のアロスティチーニ →羊肉を均等に、1cm角の正方形に切って串刺しにしたもの。硬くならないよう肉の25%が脂身になっている。
  • 手造りのアロスティチーニ → 肉の形はさまざま。赤身肉のあいだのところどころに、小さな脂身を入り込ませる。

工場製のアロスティチーニは誰にでもうまく焼けそう。ブロックみたいなきれいな四角。

手造りのアロスティチーニは、肉と肉のあいだに仕込む脂片がポイント。

外側から焼いた肉の脂が熱でとけて、赤身肉をやわらかくして、乾燥も防いでくれる。おまけに、脂身が炭に落ちると、その香りを含んだ煙が肉にさらなる風味を与えてくれる…。

羊肉の独特な香りは、煙にのって空間をただよう…。あぁ、想像するだけでおいしそう。

これを可能にしてくれるのは「fornacella フォルナチェッラ」っていう専用のグリル。

アロスティチーニの作り方

焼いている機械がフォルナチェッラ

25cmの長さの串に刺した肉の長さは10cmぶん。残った部分を持って、肉をひっくり返しながら焼けるようになってる、アロスティチーニのための薄くて長いグリル。

これがなければ、アロスティチーニに独特の風味をつけることはできないらしい。

焼きあがったら、ローズマリーの枝を使ってオリーブオイルを塗って、ローズマリーの香りを少しだけうつしてから、最後にひとつまみの塩を加えて、アツアツをゲストにサーブする。

アロスティチーニの風味を楽しむために、味付けはシンプル。

でも、アブルッツォ州といえば唐辛子!なんにでも唐辛子をかけるから、辛いのが好きな人が最後に唐辛子のフレークとか、唐辛子オイルをふりかけることは珍しくないんだって。

風味といえば、羊もアブルッツォの山でのびのび育った羊を使うことが大事。

高山植物やハーブを食べた動物の肉は、食べた草とか、山の香りがする。他のものでは代用できない、複雑な風味。

チーズでもそうだけど、高い山で放牧された動物から造られるとプレミアがつく。だって、おいしいもんね。

人も羊も牛も、育った環境や食べたものって体に出てくるんだな。

アロスティチーニの食べ方

アロスティチーニを食べるときにいちばん大事なのは、アツアツを食べること!

アロスティチーニは1本とか2本単位ではテーブルに並ばない。

まるで花束みたく、20本から40本位の束で届けられる。

お皿やトレイにはのせないで、アルミホイルで包むか、専用のツボみたいな陶器に入れて提供する。

これは、アロスティチーニが冷めてしまわないための工夫。何たって、アロスティチーニはアツアツがいちばん!

だから、食べるほうもゆっくり、ナイフとフォークを使ってお上品に食べるなんてダメ。

串を手づかみで持って、自分の歯で肉を握って、串を引き抜いて、すばやく、熱いうちに食べるのが礼儀。

うーん、…初デートには避けたほうがよさそうかな?

コース仕立てだと、前菜とか、セコンド・ピアットっていうメイン料理として食べることもあるけど、現地ではアロスティチーニとパンとワインだけで大丈夫。その代わり、1人10本とか20本とか、たくさん食べる。

添えられるのは、エクストラ・バージン・オリーブオイルに浸したパンのスライスと生ハム、羊のペコリーノチーズ。

忘れちゃいけないのが地元のワイン「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」。

他のワインっていう選択肢は無いらしくて、モンテプルチアーノ・ダブルッツォのワインをガッサータっていう炭酸水と混ぜて飲むのが伝統的。

相性はもちろん、最高。

アブルッツォ州で「食べること」とは、おいしい料理をシェアしながら仲間と一緒に過ごすこと。

「Dove ci magne  ddu’ ci magne pure tre」

「2人で食べることができるなら、3人で食べることもできる」

まとめ

  • アロスティチーニは、イタリア中南部のアブルッツォ州の羊飼いの生活から生まれた羊肉を串焼きにする郷土料理。
  • 肉を串に刺すときに、あいだに脂身を入れる。これにより、肉がやわらかくなり、風味もよくなる。
  • 専用のグリル「フォルナチェッラ」を使って焼く。
  • 味付けは塩とオリーブオイル。
  • 作る人はアツアツを提供し、食べる人はアツアツを食べる。
  • 添えるのはエクストラ・バージン・オリーブオイルに浸したパンのスライスと地元の赤ワイン「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」

今年の夏は、青空の下で、モンテプルチアーノ・ダブルッツォを片手に、アツアツのアロスティチーニにかぶりつく。

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