バーニャカウダとは?~山を越えてやってきたアンチョビと、ピエモンテとの出会い~

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バーニャカウダとは?

日本でもすっかり定着したバーニャカウダ。あれ、バーニャカウダってどこの料理だったっけ⁇

ピエモンテ州の伝統料理

ニンニクとアンチョビとオリーブオイルをペースト状のソースにして、陶器製のバーニャカウダポットでソースを温めながら、生野菜をディップしていただく。

『イタリア料理検定教本2019年度』料理出版

そうそう、ピエモンテ州。

………………で⁇ 

意外と君のこと説明できないね。

バーニャカウダの意味

何語なんだよく分からない響きだけど、フランス語っぽいイタリア語。

「バーニャ bagna」は直訳すると、お風呂っていう意味らしい。

「カウダ cauda」は熱いっていう意味。

あつ~いお風呂に野菜がつかるイメージなのかな。バーニャカウダの日本語訳は「熱いソース」。 

日本だと、ソースを温めないで使うこともあるけど、その場合は「カウダ = 熱い」っていうのが「フレイダ Freida = 冷たい」に変わって「バーニャフレイダ」っていう料理名になる。

言われてみれば、冷えてるのに「熱いソース」ってう名前は変なかんじ。

もともとは、寒さのきびしいピエモンテ州の冬の料理で

ブドウ農家の人たちが、骨まで冷えるような畑仕事をする時期に食べられていたから

ソースは温かくなきゃいけなかったんだって。

よく見る、下にキャンドルを入れてソースを温める陶器には「フォイョ fojot」っていう名前がある。

「バーニャカウダポット」とも言うよね。あれがあったらムード満点。

めずらしい、地産地消ではないイタリア料理

バーニャカウダはちょっと不思議な料理。

イタリア料理って、地元の食材を使うのが特徴の1つ。同じようなレシピでも、地域によって自分たちのところの名産品を使うから、ちょっとずつ違うものになってたりする。

トリッパなんて、〇〇風トリッパが何種類あるのかよく分からないくらい、町の名前がついたトリッパがあるもんね。(→ トリッパとは?~トマト煮込みだけじゃない、トリッパの種類~

でも、バーニャカウダの主な材料のうち、ピエモンテ州で生産されているのはニンニクと、ソースにつけて食べる野菜くらい。

ソースを作るのに欠かせないアンチョビとオリーブオイルはお隣のリグーリア州のものを使ってる。

この理由がとっても面白い。

外からやってきた材料「アンチョビ」と「オリーブオイル」

ピエモンテ州は内陸にある「海なし州」。塩がとれる海も、鉱山も無い。

冬は寒すぎて、オリーブの木も育ちにくい。

そんなピエモンテ州と対照的なのが、お隣のリグーリア州。

外からやって来た材料「アンチョビ」と「オリーブオイル」

リグーリア州の世界遺産にも登録された村「チンクエテッレ」の美しい海岸線

広大な海岸線を持っていて、魚も塩も豊富にとれるし、気候もいいからオリーブの木も育ちやすい。

そんなリグーリア州は、大きな港やオリーブオイルの生産地として、とっても有名。

アンチョビになるカタクチイワシもたくさん獲れたから、塩漬けにしてピエモンテ州まで運ばれていた。

実は「塩漬け」っていうのがポイントで、アンチョビはピエモンテの人が塩を密輸するのにひと役買っていたらしい。

どういうことかっていうと、その昔、塩はとても貴重で、輸入するためには税金を払わないといけなかった。

でも、アンチョビには税金がかからなかった。

そこで考え出されたのが、樽の中に入れた塩の上にアンチョビを乗せて、塩をかくす方法。

アンチョビを輸入しているように見せながら塩を手に入れてたんだって。

樽が検査されても、検査官にはアンチョビしか見えない。

しかも、塩漬けにされたアンチョビはいいかんじに熟成されてて、一石二鳥。

アンチョビを手に入れたピエモンテの人は、地元でとれるニンニクや野菜と一緒に食べることにした。

リグーリアからピエモンテに塩を運ぶために使われた道は「ヴィア・デル・サーレ Via del Sale = 塩の道」って呼ばれていて、リグーリアの商人が運んできた塩の樽とひきかえに、ピエモンテの穀物やバターを交換していた。

そのうち、リグーリアの品質のいいオリーブオイルもピエモンテに運ばれるようになってきた。

それまでは、バーニャカウダのソースって、ピエモンテにたくさんあったクルミの木からとれるクルミ油が使われてたらしい。今でもソースに細かくしたクルミを散らすことがあるらしくて、それはそのときのなごり。

地元の野菜「ニンニク」「カルドン」「トピナンブール」

バーニャカウダにつけて食べる野菜の定番は、ジャガイモ、かぶ、フェンネル、ラディッシュ、セロリ、ちりめんキャベツ…このあたりは日本でも手に入りそう。

でも、ピエモンテならではの野菜もある。有名なのが「カルドン Cardoon」と「トピナンブール Topinanbur」。

「カルドン」は見た目はセロリに似てるんだけど、アーティチョークの一種で茎の部分を食べる。

カルドンの中でも特別扱いされてるのは「カルド ゴッボ Cardo gobbo」っていう、ピエモンテの南東の「ニッツァ・モンフェッラート」っていう場所で栽培されてるカルドン。

地元の野菜「ニンニク」「カルドン」「トピナンブール」

ニッツァの「カルド ゴッボ」photo by Paolo Sucato

地元の野菜「ニンニク」「カルドン」「トピナンブール」

ニッツァ・モンフェッラート by Michiel 1972

 

 

 

 

 

 

 

 

ふつう、カルドンはそのままだと苦くて食べれないから、レモン汁を入れたお湯であく抜きして使うみたいなんだけど

ニッツァの「カルド ゴッボ」は、軟白栽培っていう、土にうめて太陽が当たらないようにする育て方をしてるから、やわらかくて、生でもおいしく食べられるんだって。い

もう1つの野菜が「トピナンブール」。

地元の野菜「ニンニク」「カルドン」「トピナンブール」

トピナンブール photo by Kati zunkovic

 

トピナンブールは日本語では「キクイモ」って呼ばれていて、珍しいけど日本のレストランでも見かけることがある。

ふつうのイモよりでんぷんが少なくて、生で食べるとシャリシャリとした食感があるんだって。ごぼうにも似た、ほんのりした甘さが魅力的。

忘れちゃいけないのが、自家製のパン。野菜をつけた、あつあつのソースがしたたり落ちてくるところをすかさずキャッチして、残さず食べるためにぜったい必要。

本来のバーニャカウダって、家庭にもよるけど、ニンニクを1人当たりまるまる1個使うんだって。

みんなで1個じゃなくて、1人1個。

アンチョビも1人分で100g以上使ってて、バーニャカウダを食べたら何日間もニンニクのにおいが消えない。

日本人が餃子を食べるときみたく、ピエモンテ人もバーニャカウダを食べるときはにおいを気にするのかな?

日本では生クリームを入れるレシピが多いけど、ピエモンテでも一緒で

ニンニクとアンチョビの強い味をやわらかくするために、生クリームや牛乳とか、バターを入れることもあるんだって。

大勢の人が集まる料理

今は1人1人、それぞれの鍋を使って食べるバーニャカウダだけど、昔はテーブルのまん中にどーん、と大きな鍋を置いて、みんなで鍋を囲んで食べていた。

ブドウの収穫が終わってから、たくさんの人が集まってワイワイおしゃべりしながら食べる、家族と、地域の人たちの団らんにぴったりの冬のひと皿。

地元のテーブルワイン「バルベーラ barbera」を忘れずに。

最近、日本にもすっかり定着したバーニャカウダはニンニクとアンチョビ、オリーブオイルの温かいソースで生野菜をふんだんに食べる料理である。冬の料理で、冬に不足しがちなビタミンを補給するための生活の知恵だ。家庭では本来メイン料理として食べられており、バーニャカウダ一品だけで、延々野菜をつまみながら、ワインやおしゃべりに興じるのが習慣である。

『イタリア料理検定教本 2019年度』 イタリア料理出版

引用元の本のなかで1番好きな記述。

まとめ

  • バーニャカウダの意味 →「熱いソース」
  • ソースを温めない場合はバーニャフレイダ →意味「冷たいソース」
  • ソースに使うアンチョビとオリーブオイルは「塩の道」を通ってやって来たリグーリア州のもの。
  • ピエモンテ州ならではの野菜は「トピナンブール」と「カルドン」。
  • ピエモンテ州の寒い冬に、大勢の人が集まって食べた温かい料理。
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