カッチャトーラとは?~ハンターたちのイタリアン~

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カッチャトーラとは?

家庭料理の定番。鶏肉のトマト煮込み。

イタリア料理に特別な思い入れがなくても、これを「チキン・カッチャトーラ」と呼ぶ人は多い。

カポナータとかマルゲリータと同じくらいイタリア料理として知られているカッチャトーラだけど、これってどういう意味⁇

「カッチャトーラ cacciatora」はイタリア語で「狩人風」。

ん?そういえば、なんで狩人風っていうのかな⁇

狩人風という名前の理由

そればずばり、狩人が獲った獲物で作った料理だから。

え、そのまんま⁇ってかんじだけど、よく考えてみるとちょっとおかしい。だって、鶏って飼育するもので、狩ることはないもんね。

カッチャトーラはもともとは鶏じゃなくて、ウサギとか野鳥とかの狩猟肉を使った料理。

一説によると、狩りが終わってへとへとに疲れた旦那さんが持ち帰った獲物を、奥さんがおいしく料理したもの。

また一説によると、狩人が獲ったばかりの肉の強い匂いをやわらげるためにハーブやお酢をきかせて作った料理。

それがおいしかったから、他の肉でも作られるようになって、今では手に入りやすい鶏肉のカッチャトーラが代名詞になってしまった、ってことらしい。

「鶏肉=ポッロ pollo」のカッチャトーラは「ポッロ・アッラ・カッチャトーラ pollo alla cacciatora」。

「ウサギ=コニッリオ coniglio」のカッチャトーラは「コニッリオ・アッラ・カッチャトーラ coniglio alla cacciatora」。

カッチャトーラの作り方

もともとは狩人やその家族が、獲物をおいしく食べるために工夫して作った料理。

地域や家庭によってバリエーションがあって「こうしなきゃいけない」っていう決まりは無いけど、たいてい、狩猟肉の強い味や食感をやわらげるために、ニンニク、ローズマリー、ビネガーを使う。

トマトソースはほとんどのレシピに入るけど、トマトが料理に使われるようになったのは17世紀に入ってからだから、その後に徐々に広まっていった。

おいしいけどスジばった肉を、材料と一緒にワインで蒸したり煮込んだりしてやわらかく作る。

家庭でも簡単に作ることができる料理には、森で採れたキノコが入ることもあれば、家の畑で育てた玉ねぎやピーマンが入ることもあって、家庭ごと、季節ごとにちょっとずつ違う。

地域によって少しずつ違う個性があるっていうのもイタリア料理っぽい。

北イタリアではキノコやジュニパーベリーみたいなハーブが多く入る。

シチリアではピーマン、ケッパー、アンチョビを入れてトマトソースで煮込むレシピが多い。

特徴的なのはイタリアのおへそ、ウンブリア州。トマトは使わずにレモン、ケッパー、アンチョビ、オリーブが入る。見た目は白身肉とオリーブの色合いが軽やか、さわやかな感じ。

北~中部イタリアで作られることが多いけど、昔から作られてきたシンプルな料理。どこの郷土料理なの?って、起源をたどるのは難しいんだって。

晩ごはんのレシピが決まらなかったら、冷蔵庫の中の肉と野菜とハーブを適当に鍋につっこんで、ワインで煮込んだ「うちの特製カッチャトーラ」もいいかもね。

添えるのは、クリーミーなポレンタやジャガイモのロースト。

ローマの「仔羊のカッチャトーラ」

ローマの仔羊のカッチャトーラ

地域によって違う個性があるカッチャトーラ。

ローマのカッチャトーラといえば仔羊のカッチャトーラ。

イタリア語の料理名は「アバッキオ・アッラ・ロマーナ abbacchio alla romana」とか「アバッキオ・アッラ・カッチャトーラ abbacchio alla cacciatora」。

「アバッキオ abbacchio」っていうのが仔羊のこと。しかも、生まれてすぐの母乳だけを飲んでいる乳飲み仔羊のことで、くさみが無くて柔らかい、ピンク色のお肉はとっても繊細な風味。

ローマ料理にはこのアバッキオを使うものが多くて、クリスマスや休日の定番料理。オーブンで焼いたり、煮込んでから卵黄とレモンのソースを加える「ブロデッタートbrodettato」とか色んな料理になる。

なかでも有名なのが仔羊の骨付き肉をシンプルに焼いた「アバッキオ・ア・スコッタディート abbacchio a scottadito」。

「ディート dito=指」「スコッタディート scottadito=熱すぎて指をやけどする」っていう料理名は、昔、羊飼いがたき火で仔羊の骨付き肉を焼いて食べるときに指をやけどするほど熱かったことから。

そして、もう1つ有名なのが「アバッキオ・アッラ・カッチャトーラ abbacchio alla cacciatora」。

ローマの仔羊のカッチャトーラは、トマトは使わず、乳飲み仔羊の柔らかい肉に、ニンニク、アンチョビ、ローズマリー、ビネガーで味を付けるのが特徴。付け合わせはジャガイモのローストで。

あれ?羊って狩猟肉じゃないんじゃない?

と、思いきや、ハーブやビネガーを使う味付けが、狩人が獲物を調理する方法と似ていたからこう呼ばれるようになったらしい。

柔らかくて甘味のある乳飲み仔羊のアバッキオは美味しいけど、数が少ないから乳飲みを卒業した1才にならない仔羊の「アニェッロ agnello」を使うのも一般的なんだとか。

トスカーナ州の「イノシシのカッチャトーラ」

狩猟肉をよく食べる州といえば、トスカーナ州。山に多いイノシシの肉は、トスカーナ料理にひんぱんに登場。

イノシシのイタリア語は「チンギアーレ cinghiale」。

トスカーナではイノシシの生ハム「プロシュット・ディ・チンギアーレ prosiutto di cinghiale」とか、イノシシのばら肉を細かくひいたサラミの「サラーメ・エ・サルシッチャ・ディ・チンギアーレ salame e salsiccia di cinghiale」が前菜のお皿にならぶこともある。

この州の人気パスタは、卵を使った生地でつくる幅広パスタ「パッパルデッレ pappardelle」と、うどんみたいな見た目の「ピーチ pici」。合わせるソースはウサギやカモ、そして、イノシシで作るラグーソース。

狩猟肉が日常的なトスカーナでは、ウサギや野鳥のカッチャトーラはもちろん、イノシシのカッチャトーラも人気のお皿。

ポイントはくさみをとるために、ローレルやローズマリーみたいなハーブや、セロリ、玉ねぎをたっぷり混ぜた赤ワインでマリネすること。トマトは?作る人によるみたい。

かみ応えのある赤身肉には、トスカーナのしっかり目の赤ワインが欲しくなるに違いない。

「サラミーニ・イタリアーニ・アッラ・カッチャトーラD.O.P.」

サラミーニ・イタリアーニ・アッラ・カッチャトーラ

忘れちゃいけないのがカッチャトーラの名前を持つサラミ「サラミーニ・イタリアーニ・アッラ・カッチャトーラ salamini italiani alla cacciatora」の存在。

200~300gの小さなサイズで、ルビーレッド色のサラミのなかに、均一に脂肪の粒がつまってる。少し曲がった形が特徴的。

何で「狩人風サラミ」なのかっていうと、狩人たちが狩りのあいだにバッグに入れて持ち歩いて、パンと一緒に食べていたから。

脂肪とエネルギーが適度にあってタンパク質もとれる。塩漬けにして熟成したサラミは狩りで失った塩分を補うのにちょうど良くて、凝縮したうま味は狩人たちにとって理想的。

今ではイタリアのD.O.P.製品。イタリア中部~北部で飼育された高品質な豚肉を使って、伝統的な作り方をされものだけが「狩人風サラミ」を名乗ることができる。(※D.O.P. Deminazione di Origine Protetta 原産地呼称保護= 決められた地域で、厳しく決められた方法で作られた製品に与えられるヨーロッパの認証)

塩、コショウ、ニンニクひとつまみだけをまぶして、強いスパイスは使わない。腸詰めされたら少なくとも10日~熟成させて仕上げられる。質の良い豚肉で作られたサラミは、芳ばしい香りと脂肪の甘味があって酸味は控えめ。柔らかくて栄養があるから子供からお年寄りまで安心して食べられる優等生。

でも、現代人はヘルシー志向。以前と比べて脂肪を減らして、タンパク質の割合を増やして作られるようになってきているらしい。

他の生ハム、サラミ類やチーズ、マリネした野菜とフォカッチャを用意したら、スプマンテを開けて楽しい時間のはじまり。かつての狩人たちの食べ方とはすっかり変わってきた様子。

まとめ

  • 「カッチャトーラ=狩人風」は狩人が獲物で作る料理。
  • 明確なレシピは無く、狩猟肉をおいしく料理するためにニンニク、ハーブ、ビネガーを使って煮込むのが定番。トマトソースが入ることも多い。
  • ローマの定番は仔羊を使った「アバッキオ・アッラ・カッチャトーラ」。トマトは使わずニンニク、アンチョビ、ローズマリーで味付けする。
  • トスカーナではイノシシを使った「チンギアーレ・アッラ・カッチャトーラ」も一般的。くさみをとるためにマリネする。
  • 狩人が携帯していた「サラミーニ・イタリアーニ・アッラ・カッチャトーラD.O.P.」は栄養分豊富で食べやすく、現代でも人気のイタリアンサラミ。

何よりも自分たちの郷土料理を大事にするイタリア人。

外からの料理を取り入れて、本場より洗練させてしまう日本人。

お皿の上の色んな個性を味わいたいと思うのは、日本人の個性なのかも。

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