カルピオーネとは? ~イタリア版の南蛮漬けを整理整頓~

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「イタリア版の南蛮漬けです」

って説明するたびに、何かもやもやする…。

南蛮漬けに対するイメージって、自分も相手もなんかぼやっと持っていて、その場では何とかなってるんだけど

目のまえにある「イタリア版の南蛮漬け」にたいして、しっくりこない。

相手と同じ気持ちを「ぴたっ」と共有できてないような気がする。

何でかっていうと、自分が分かってないから。「イタリア版の南蛮漬け」の正体を。

分かってしまえば、なーんだ。簡単。

何がもやもやするかって、似てるのに違う名前の「南蛮漬け」がいっぱい居るんだよ。

そんなのは一瞬で解決しちゃいましょう。

結論「イタリア版の南蛮漬け」の種類と特徴

お店によっては「カルピオーネ」

違うお店では「スカペーチェ」とか「エスカベッシュ」

他のお店で見た「サルデーレ イン サオール」

どれも似てないか?ってこと。

結論。

作り方は全部同じで、地域によって呼ばれ方がちがう。

地域が違うから、材料が少しだけちがう。

「カルピオーネ」は北イタリアの南蛮漬け。

‛ニンニク、玉ねぎ、ビネガー、スパイス、ハーブでマリネする’。

マスみたいな淡水魚が多いけど、カツレツとかズッキーニみたいな、肉とか野菜もマリネされる。

「スカペーチェ」は南イタリアの南蛮漬け。

カルピオーネと同じように作られることが多いけど、サフランとかミントとか、唐辛子が入ることも多い。

「エスカベッシュ」はスペイン語で、これが南イタリアに伝わって「スカペーチェ」って呼ばれるようになった。

「サルデーレ イン サオール」はヴェネト州の南蛮漬け。

「サルデーレ」はイワシのこと。だからこれはイワシの南蛮漬け。松の実とレーズンが入るのが特徴的。

はい、すっきり。

ついでに背景もおさえれば、もう大丈夫。

カルピオーネ

カルピオーネってどんな意味なのか?

実はこれ、魚の名前らしい。

カルピオーネ

カルピオーネ

「ガルダ湖」っていう、ロンバルディア州とヴェネト州にまたがる大きな湖を泳いでた魚で、こいつで作ってたから「カルピオーネ」っていう料理名になったらしいんだけど…

今では数が減ってなかなか獲れないんだって。残念。

この料理の起源はピテモンテ州かロンバルディア州のどっちかで

食べものを少しでも長く保存するためにお酢とスパイスでマリネしていたのが始まり。

マリネは淡水魚が持っている泥っぽい味をカバーするのにも役立った。

北イタリアの貧しい農民の夏の料理だったのが

田舎の女の子が、メイドとしてトリノの裕福な家で働くことになったときに

持っていった地元の伝統料理が、都会に広まっていった説がある。

もともとは賞味期限を延ばすためにお酢や香辛料につけていたのが

保存しているうちにゆっくりとスパイスやハーブの香りが変化して

独特な風味が魚に移って、お酢を使ってるから消化も良くなって

たくさんの人の味覚にアピールするような芳ばしくて香り高い夏の前菜に大変身。

レストランの前菜でも、とっても綺麗に盛り付けられたカルピオーネに出会ったことが何度もある。

スカペーチェ

カルピオーネは北イタリアの農家のキッチンから生まれた料理だったけど

スカペーチェは国際派。スペインから、南イタリアに伝わった。

「スカペーチェ scapece」はスペイン語の「エスカベッシュ Escabeche」が語源。

スペインでもエスカベッシュはタパスとして人気があるけど、この料理をスペインに伝えたのは、アラブの人たちなんだとか。

エスカベッシュの語源は、アラビア語の「イスケバック iskebech = 酢のソースで味付けした肉料理」とか「sikbâg = 魚のマリネ」っていう説があって、肉や魚の保存方法としてスペインに伝わった。

スペインやポルトガルでは、豚肉とか、うさぎとか、鶏肉のエスカベッシュが一般的だったんだって。

食べ物とか、料理とかが南イタリアに伝わると、魚料理になって定着することが多い。

クスクスも、生まれ故郷の北アフリカでは肉と一緒に食べられるけど、シチリアでは魚と一緒に食べられてるもんね。

スカペーチェは、アブルッツオ州やモリーゼ州、プーリア州では、マリネ液にサフランが加えられることがある。

その他にもミントが入ったり、唐辛子が入ったり。

作り方はカルピオーネと似てるけど、フレーバーと色が違う。こともある。

…こともある、っていうのは、村とか町単位でもちょっとずつ料理が違って、地域でひとくくりに出来ないイタリア料理らし理由から。

プーリア州のガリポリっていう町のスカペーチェは個性的。

スカペーチェ

スカペーチェ ガリポリーナ photo by Own work

揚げた魚を、お酢にひたしてサフランで黄色くしたパン粉でマリネする。

ガリポリって、イタリアのブーツのかかとのプーリア州の、それも、いっちばんかかとの先の海に突き出した場所にある。そんな分かりやすい場所にあるから、よく外国から襲われてたんだって。

外国人の侵略をふせぐために、町の周りを壁でガードして、長いあいだ壁の内側で過ごしていた。

巣ごもり生活中に、できるだけ食べ物を長持ちさせるために、パン粉とサフランでマリネしたスカペーチェが生まれたみたい。サフランが入ると、キレイだなぁ。

サルデーレ イン サオール

サルデーレ イン サオール

サルデーレ イン サオール         photo by « R☼Wεnα »

ヴェネト州は北イタリアだけど、カルピオーネじゃなくて「サオール」って言う。

「サルデーレ」はイワシのこと。

「サルデーレ イン サオール」は「イワシのサオール」。

「サオール」はヴェネツィア方言で「味」っていう意味で

マリネ液に、レーズンと松の実が入るのが特徴的。

イワシ以外だと、鶏肉とか、カボチャのサオールも人気なんだって。

「サオール」は、海でたくさんの時間を過ごした船乗りたちのレシピ。

航海中に、とった魚を長持ちさせるために考え出された保存方法。

ヴェネツィア共和国は通称「アドリア海の女王」。

使用される松の実やレーズン、スパイスからは、東洋の香り…。

ヴェネチアには「バーカロ bacaro (bàcari)」っていう、「ちょっと一杯」できる小さいバーみたいな、立ち飲み屋みたいなお店があって

そこで出される「チケッティ chicheti」ていうおつまみとしても人気なんだって。

「オンブラ ombra」っていうグラス一杯のワインと楽しむ。最高。

南蛮漬けとは?

「イタリア版の南蛮漬け」はイタリア中に広まっていて

はじめは料理っていうより保存の方法だったのが、今では各地方の郷土料理。

ところで、日本の南蛮漬けはどうやって広まったんだっけ?

日本に南蛮漬けがやって来たのは15世紀にスペインやポルトガルとの貿易が始まってからのことで

「南蛮貿易」って言われてるやつ。

「南蛮」っていうのはフィリピンとかインドネシアのことで、ここで貿易してたから「南蛮貿易」。

そしてもたらされた、異国風の新しくて珍しいものに対して「南蛮」がつけられるようになった。

例えば、唐辛子のことは「南蛮唐辛子」。

「南蛮漬け」はスペインからやって来た。揚げた小魚を、唐辛子やネギ入りのお酢で漬ける新しい料理。

ヨーロッパでは、食べ物を保存するために昔から作られてきた料理が、日本には新しい料理として伝わったってことか。

こうやって日本に来たルーツを見てみると、日本の南蛮漬けは南イタリアの「スカペーチェ」と似てるっぽい。

まとめ

  • 「カルピオーネ」「スカペーチェ」「エスカベッシュ」「サルデーレ イン サオール」の違いは、作られている地方の違い。
  • 「カルピオーネ」は北イタリア。貧しい農民料理が起源。
  • 「スカペーチェ」は南イタリア。スペインの「エスカベッシュ」が伝わった。サフランや唐辛子、ミントが入ることがある。
  • 「サルデーレ イン サオール」はヴェネト州。東方貿易船乗りたちのレシピ。松の実とレーズン入りのマリネ液にイワシを漬ける。
  • 「南蛮漬け」は南蛮貿易でヨーロッパからもたらされた新しい料理。

「イタリア版の南蛮漬け」は「保存する」ことでスパイスとハーブの「風味をつける」のがポイント。

だからひと晩以上寝かせる必要がある。

じゃあ、よく問題になるマリネとカルパッチョの違いは?

カルパッチョは、新鮮な食材にオイルや塩をかけて食べる。

カルピオーネは保存するのが主な目的。うん、もう大丈夫。

動画でも詳しく話してます。

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