コルツェッティとは?~スタンプ型の高貴なパスタ~

  • LINEで送る
コルツェッティとは?

イタリアには何百種類のパスタが存在するんだろう?

ふつうだと、思いつくのはスパゲッティ、マカロニ、フェットチーネ、リングイネ……とか、そんなもんかな?でも、いざイタリア料理の世界に足をふみ入れてみると、その種類の多さに頭がパンクしそうになる。

貝のかたちのコンキリエ、耳たぶのかたちのオレッキエッテ、食いしん坊のパッパルデッレ、ヴィーナスのおへそのトルテッリーニ…。

めまぐるしい個性派パスタが顔をそろえる中、そのインパクトで他を圧倒するパスタ。

それが、コルツェッティ。

コルツェッティ Corzetti 、またはクロゼッティ Croxetti は、道具を使って生地に模様をつけるタイプのパスタ。

仲間を探すとしたら「リーガニョッキ」とか「ガルガネッリ」とか。パスタに道具でミゾを作って、ソースをよく絡むようにするタイプのやつ。

コルツェッティとは?

リーガニョッキ

コルツェッティとは?

ガルガネッリ photo by fugzu

 

 

 

 

 

 

でも、コルツェッティはソースを絡みやすくする、っていう目的にしては手が込みすぎてる。まん丸にカットした生地に、キレイな模様が描いてあるんだから。

今日、見つけたその模様には、この先もう会えないかもしれないよ。

コルツェッティのポイント

  • 丸い木製のスタンプのような道具で模様をつけたパスタ。リグーリア州の郷土料理。
  • 生地は直径6cmくらいの円形で、模様はくだもの、花、イニシャル、紋章など、たくさんのバリエーション。
  • 名前の由来は昔のジェノヴァ共和国のコイン。
  • ソースは松の実、パルミジャーノチーズ、マジョラムをすりつぶしてつくる「ピノーリ」や「ペスト・ジェノヴェーゼ」が定番。

こんな感じかな?

コルツェッティ・スタンプについて

コルツェッティ・スタンプ

コルツェッティ・スタンプ    photo by Nick-philly

コルツェッティ・スタンプ

下から photo by Nick-philly

丸い木製のスタンプの仕組みは、上と下の2つのパーツに分かれてる。

下のパーツは底がくりぬかれていて、パスタカッターの役割。まずはこいつで、パスタ生地を円形にカット。

それから、パスタ生地に模様をスタンプ。

なんと、取っ手がある上のパーツだけじゃなくて、下のパーツの上側にも別の模様が刻んであるから、ふたつの断面ではさんでスタンプ。

その結果、裏と表でちがう模様のパスタが完成。

すんごい手間がかかってるよね。考えた人、サービス精神ありすぎ。

このスタンプの作り手は、リグーリア州の「リヴィエラ・レヴァンテ」っていう、ジェノヴァから東側のトスカーナの方に向かう海岸線にある町に数人しかいなくて、すごーく貴重だから、世界中の料理人がリヴィエラ・レヴァンテまで買いにやって来るんだって。

※ちなみに、ジェノヴァから南フランスの方向に向かう西側の地域は「リヴィエラ・ポネンテ」。

貴族と共にあった歴史

コルツェッティがいつ誕生したのかは分かってないないみたいだけど、ルネサンス期(14~16世紀)にはすでにたくさんの貴族が持ってたらしいから、それよりは前。

もともとは、パスタに昔のジェノヴァコインをスタンプしたのが始まりで、そのコインに十字架がデザインされてたのがコルツェッティっていう名前の由来。

十字架はラテン語で「Crus」。ジェノヴァ方言で「 Cröxe」。それが「Corzetti、Croxetti」に変化したってことらしい。

コルツェッティの歴史

ジェノヴァ共和国のコイン photo by       Classical Numismatic Group

ジェノヴァのコインの模様が刻まれていたコルツェッティ・スタンプには、時代とともに、貴族たちの家紋が彫られるようになっていく。

この華やかなスタンプ・パスタの生まれた背景には、ジェノヴァのきらびやかな歴史が見えかくれする。

ジェノヴァは中世の時代、ヴェネツィア、ピサ、アマルフィと並ぶ4大海洋共和国の1つで、ニックネームは「スーパーバ = 誇らしげになもの」。

小麦は育ちにくい土地だったけど、地中海でうまいこと取り引きして調達。

そのやり方は、安い時期に小麦を買い込んでおいて、たびたび起きる飢饉のときに高く売るっていう計算高い方法。パスタを乾燥させるための太陽とか風とかの気候もばっちりだったから、パスタを作るのに不自由なし。

お金持ちのジェノヴァの貴族は、自分たちの家紋をデザインした、自分たちならではのコルツェッティを作って、ゲストに富と地位を見せていたんだって。

コルツェッティ、大活躍。

それだけじゃなくて、結婚式のときに、コルツェッティの表と裏に、両家の家紋をスタンプして振るまったとか、お婿さんのお父さんが、家紋入りのスタンプをお嫁さんにプレゼントしたものが、代々受け継がれてる家もある、とかっていう話まで。

なんかもう、ただのパスタを作る道具じゃないよね。コルツェッティ、大活躍!

今では家紋のほかにも色んなデザインが作られていて、お花模様とか、くだものとか、都市の紋章とか、お店のロゴとか…。

オリジナルのコルツェッティを作ってもらえたら、家宝になること間違いなし。

コルツェッティにあえるソース

コルツェッティは、リヴィエラ・レヴァンテの誇り。

当然、合わせるソースもその土地ならではのソース。有名なのは

  • 松の実、パルミジャーノ・レッジャーノ、マジョラムを専用のすり鉢ですりつぶしたペースト状のソース「ピノーリpinoli」
  • あとは、クルミのペストに…
  • もちろん、ペスト・ジェノヴェーゼ!

どれも、モルタイオっていう専用のすり鉢ですりつぶして作るのがポイント。ミキサーだと熱が加わって酸化しちゃうんだとか。(モルタイオと、ペスト・ジェノヴェーゼについてはこちら→「ナポリのジェノヴェーゼとは?~茶色のジェノヴェーゼの正体~」)

  • ポルチーニ茸とトマトソースで作る「トッコ・ディ・フンギ tocco di funghi」

も定番。トッコって、ジェノヴァ方言でソースのことなんだって。

ルネサンスの貴族は、どんなトッコで食べたんだろうね。

もう1つのコルツェッティ

リグーリア州には、コルツェッティが2種類。

1つはスタンプで作るコルツェッティ。もう1つはスタンプを使わないコルツェッティ。

コルツェッティ・アッラ・ポルチェヴェラスカ  Corzetti alla polceverasca

ニョッキ形(短い棒状)に切り分けた生地に2本の指をあてて両端を押しつぶし、平らな8の字形にしたショートパスタ。(後略)

『イタリアの地方料理』柴田書店

スタンプのコルツェッティは「リヴィエラ・レヴァンテ」っていう、リグーリアの東の海岸線で作られるパスタだったけど、こっちは「ポルチェヴェッラ渓谷」っていうジェノヴァから内陸に行った先の谷で生まれたパスタ。

特徴は8の形にねじれたパスタ生地。名前の由来は、腰に巻く「コルセット」で、8の形のくびれの部分が、コルセットをつけてキュッとしまった女性の腰みたく見えたからっていう説が有力。ってことは、こっちのコルツェッティはナイスバディ。

とにかく、混同注意。

まとめ

  • コルツェッティは、丸い木製のスタンプで模様をつけたリグーリア州のメダルのようなパスタ。
  • ジェノヴァのコインに描かれていた十字模様をパスタにスタンプすることから始まり、時代の変化とともに貴族の家紋をデザインしたものに変化していった。
  • 模様は裏と表にあって、ソースを絡みやすくする目的のほかに、中世の貴族が富と地位を表現する目的で使用された。
  • ソースは「ピノーリ」や「ペスト・ジェノヴェーゼ」が定番。
  • ポルチェヴェッラ渓谷で伝統的に作られているコルツェッティは、8の形にねじれたショートパスタ。

今となっては作り手がいなくなってしまいそうなコルツェッティ・スタンプ。

刻まれた唯一の模様は、自分だけの宝物。

動画でも詳しくお話してます。合わせるワインもこちら↓

SNSでもご購読できます。