
実は、日本のカツレツとはまた違う魅力。
コトレッタって何?
知れば知るほど楽しい、色んなコトレッタたちを発見しましょ。
語源 ~コトレッタなのかコストレッタなのか問題~
「コトレッタ」「コストレッタ」
お店によってメニュー名が微妙に違うのが悩ましいところ…。
Costletta alla Milanese コストレッタ アッラ ミラネーゼ
ミラノ風仔牛のカツレツ。骨付きの仔牛肉を薄くたたき伸ばして、パン粉(とても細かい)をつけて、フライパンに多目の澄ましバターを入れ、焼くように揚げる。ミラノ方言でコトレッタと呼ばれることがあるが、この場合のコトレッタ(コストレッタ)は骨付き肉を意味し、本来は必ず、骨付きの仔牛肉を用いたものでなくてはならない。
『イタリア料理検定教本2019年度版』料理出版
検定教本とか、辞典とか、ソムリエ協会発行の本とか、そういう「ザ・正統派」みたいな本には必ず「コストレッタ」の紹介が載ってて、それには骨付きの仔牛肉を使うって書いてある。
でも何か「コトレッタ」っていう名前の方がよく聞く気がする。
てことで、ルーツを調べてみると
もともとは牛の骨付きロース肉を使ってて、その部位が「コスタータ Costata」っていうから「コストレッタ」っていう料理名になったんだけど
それが、フランスに「コートレット Cotoletto」っていう名前で伝わって
骨付きじゃないアレンジが人気になって
ミラノに逆輸入みたいな感じで戻って来たときに、ミラノ方言の「コトレッタ」って呼ばれるようになったらしい。
どうやら日本のレストランでは
- 骨付きの仔牛のロース肉で作ったミラノ風カツレツを「コストレッタ」
- それ以外の材料で作ったミラノ風カツレツを「コトレッタ」
って呼んでることが多い。
豚肉とか鶏肉で作ってるお店もたくさんあるしね。
骨付きのロース肉は部位がごまかせないから、もともとは裕福な人の食べ物。
ちなみに、日本のカツレツってフランスのコートレットが伝わって来たんだって。
コートレット → コートレッツ → カートレッツ → カツレツ 確かに。
コトレッタの種類
コトレッタと言えば「コトレッタ アッラ ミラネーゼ」
「ミラノ風のカツレツです」とは言うものの…
どんなのがミラノ風?日本のカツレツと何が違うの?
しかも、ミラノ風じゃないコトレッタもあるみたい。
コトレッタ アッラ ミラネーゼ
コトレッタの特徴は…
- 肉をたたいて薄ーーく伸ばす
- とても細かいパン粉をまぶす
- 多めのバターで焼くように揚げる
お皿からはみ出るほど薄く大きく伸ばされたコトレッタは象の耳に例えられて
「オレッキア デレファンテ Orecchia d’elefante」って呼ばれる。
「オレッキア Orecchia = 耳」「エレファンテ elefante = 象」
イタリアのパン粉はとっても細かい。このパン粉とバターで揚げ焼きにすることで、あの「さくっさくっ」の食感のコトレッタが誕生するのか…。
食べたくなってきた…。
さてさて「アッラ ミラネーゼ(ミラノ風)」 ってどんななのかな?
ミラノ風と名の付く料理といえば??
「ミラノ風ドリア」「ミラノサンド」???
違う違う、あいつらは日本イタリアンだ。…おいしいけど。
ミラノ風と言えば「リゾット アッラ ミラネーゼ」
サフランが入るリゾット。コトレッタと並ぶミラノの代表料理「オッソブーコ」に添えられるのが定番。

リゾット アッラ ミラネーゼ photo by grobery

オッソブーコ photo by Micaela & Massimo

通称「象の耳」 photo by pier
コトレッタの黄金色の衣に、サフランの黄金色のリゾット。
「アッラ ミラネーゼ」の正体は黄金色。
ミラノはイタリアで1番の商業都市だから、イタリア人は黄金色の食べ物をお金持ちのミラノに例えることが多いんだって。食べたらお金持ちになれそう?
ミラノ風はソースをかけたりはせず、レモンを添える。
たまに格子模様が入ってるコトッレッタがあるけど、ちゃんと目的があって
- 肉を縮みにくくする
- パン粉をはがれにくくする
- 火の通りをよくする ため。
おしゃれな感じにしてるのかと思ったら違ったのか。
コトレッタ アッラ プリマヴェーラ

コトレッタ アッラ プリマヴェーラ
特徴:トマトとルーコラがのる
「アッラ ミラネーゼ」はプレーンなコトレッタにレモンを添える。
それだけだと寂しいのか、トマトとルーコラが乗ったコトレッタをよくかけ見る。その名も「コトレッタ アッラ プリマヴェーラ」。
「プリマヴェーラ primavera = 春」
「アッラ プリマヴェーラ」ってつくパスタもあって、春野菜を使うのが特徴。
コトレッタ アッラ ボロネーゼ

photo by WILO-MA
「アッラ ボロネーゼ = ボローニャ風」
特徴:生ハムとチーズをのせて、ブロード (ブイヨン) で蒸し焼きにする
「ボローニャ」はエミリア・ロマーニャ州の州都。
ボロネーゼと言えば、スパゲッティのミートソースを想像するけど、コトレッタにはおなじみのミートソースはのってない。
イタリアの名高い都市には、その昔、人々がそれぞれの特徴を一言で表現した一種のあだ名があった。例えば、ヴェネツィアは「ラ・セレニッシマ(いとも晴朗なる都)」、ジェノヴァなら「ラ・スーペルバ(誇り高き都)」、ローマは「チッタ・エテルナ(永遠の都)」といった具合で、ボローニャは「ボローニャ・グラッサ」と呼ばれていた。これは、「肉の王国、ボローニャ」という意味である。
『イタリア食文化こぼれ話』西村 暢夫 著
ボローニャは「ボローニャ・グラッサ」というあだ名を持つ都市で
「グラッサ」は肉とか脂っぽいとかこってりしてるっていう意味。
「アッラ ボロネーゼ」が付く料理は大抵、贅沢でこってりしてる。
要するに「ミートソースといえばボローニャ風」だけど「ボローニャ風 = ミートソース」じゃないってことかな。
生ハムとチーズがたっぷり乗った、いかにもこってりしたコトレッタもおいしそう。
コトレッタ アッラ ヴァルドスターナ

photo by Zenz 写真はフランスのコルドンブルー。よく似てる。
「アッラ ヴァルドスターナ = ヴァッレ ダオスタ風」
特徴: 中に生ハムとフォンティーナチーズが入る
ヴァッレ ダオスタ州はイタリアの北西の、イタリアで1番小さな州。
州のほとんどが山で、名産品は高原で放牧された牛のフォンティーナチーズ。
色々な料理に使われているこのチーズは、やはりここのコトレッタにも必要不可欠。
フォンティーナチーズは、心地よい芳香とナッツの風味、はちみつのような甘味が特徴。
ヴァッレダオスタ風も想像するだけでおいしそう。
シュニッツェルって?
ドイツやオーストリアでもコトレッタは大人気、というか、もはや国民食みたいなんだけど、コトレッタじゃなくてドイツ語で「シュニッツェル schnitzel」って呼ばれてる。
ドイツのシュニッツェル
ドイツで有名なのは
- 「イェーガーシュニッツェル」→「イェーガー = 猟師」。キノコ (森の野菜)入りのクリームソースがかかる。
- 「ツィゴイナーシュニッツェル」→「ツィゴイナー = ジプシー」。パプリカとトマトのソースがかかる。

イェーガーシュニッツェル photo by JIP

ツィゴイナーシュニッツェル photo by Benreis
ドイツのシュニッツェルは豚肉を使うことが多いみたい。
ウィンナーシュニッツェル

ウィンナーシュニッツェルは直訳すると「ウィーンのカツレツ」
ジャムをのせることもあるみたいだけど、その他の特徴は
「コトレッタ アッラ ミラネーゼ」とほとんど一緒。
ドイツのシュニッツェルは豚肉を使うことが多いみたいだけど
オーストリアでは仔牛肉が正統派で、仔牛肉を使ってないと「ウィーンの」カツレツじゃなくて「ウィーン風の」カツレツになるらしい。
この、ウィーンのカツレツは19世紀にミラノからウィーンに伝わったって説が有名。
その頃、ミラノのあるロンバルディア州はオーストリアに統治されていて
オーストリアのラデツキー元帥っていう軍人がミラノに駐在したときに「コトレッタ アッラ ミラネーゼ」を気に入って、オーストリアの宮廷に持ち帰ったんだとか。
まとめ
- コトレッタは正式には「コストレッタ アッラ ミラネーゼ」
- 「コストレッタ 」は、 骨付きの仔牛のロース肉で作るミラノ風カツレツ。
- それ以外のカツレツは「コトレッタ」と呼ばれることが多い。
- 「コトレッタ アッラ ミラネーゼ」は何も加えず、レモンを添える。他にも地域により色々なご当地コトレッタがある。
- ドイツやオーストリアでは「シュニッツェル」と呼ばれる。
現地には「コトレッテリア」っていう専門店があって色んな種類が楽しめるんだって。いいなぁ…。
ちなみに、トリッパ専門店は「トリッペリア」だって。
何か、愉快な感じ。
動画でも勉強中