イタリアのクスクスとは?~他文化と混ざり合うという個性~

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イタリアのクスクスとは?

「クスクス」

日本人の私たちが聞くと、なんだか、やわらかくて、こそばゆい感じの名前。

イタリア料理のイメージはないかもしれないけど、実は、シチリア島のれっきとした郷土料理。

クスクスには、シチリアの歴史がぞんぶんに詰まっている。

ポイント

  • クスクスはセモリナ粉を小さな粒状にした小さなパスタ。
  • 北アフリカからシチリアに伝わり、シチリアの郷土料理「クスクス トラパネーゼ」として発展。
  • クスクシエラという専用の陶器で蒸したクスクスに、魚のスープをしみ込ませる。
  • シチリアの西海岸のトラーパニ周辺に根付いている

こんな感じかな?

クスクスについて

クスクスっていうと、イタリアンっていうより、もっとエキゾチックな国のイメージ。

実際に、この料理が生まれたのは、チュニジアやモロッコ、アルジェリアとかの、北アフリカのあたり。ここの先住民のベルベル人の主食だった。

可愛らしい名前の語源はアラブ語で「いちばん良い食べもの」とか「食事」っていう意味で

見た目が米つぶみたいだから誤解されやすいけど、原料は粗びきのセモリナ粉。世界最小のパスタの異名を誇る。

パスタと言っても、茹でるんじゃなくて蒸すっていうのがクスクスの特徴。

本場、北アフリカの人たちは、蒸してバターをからめて、スープとかシチューと混ぜたり、スパイスを効かせたりして食べてるんだって。具材は野菜やひよこ豆、羊肉や鶏肉が中心。

食べてみると、クスクス自体があんまり自己主張してこなくて、何とでも合わせやすい。

だから、人に連れられて国境を越えても、その土地にすんなり溶けこんで色んな国で独自のクスクスとして発展した。

ブラジルとかフランスでは今や国民食。ブラジルの黄色いクスクスは、キャッサバとトウモロコシ粉で作られていて、もはや小麦のおもかげはどこへやら。

フランスでは、クスクスのサラダのことを「タブレ」って呼んだり、具材をたくさんのっけて「クスクスロワイヤル」って呼んだり。

自分の個性は守りつつ、相手の良いところをどんどん吸収するクスクス。人間だったらモテるタイプかも。

クスクスについて

鶏肉と野菜のクスクス

クスクスについて

ブラジルのクスクスの黄色はトウモロコシ粉

クスクスについて

フランスで人気のタブレ

イタリアのクスクス「クスクス・トラパネーゼ」

北アフリカの主食はシチリアにたどり着いて、シチリア色にどっぷり浸かる。

シチリアにクスクスを持ちこんだのは、シチリア島のいちばん西海岸にあるトラーパニの漁師。

シチリア西海岸とチュニジアは目と鼻のさき。ローマとかミラノよりぜんぜん近い。

地中海に漁に出たトラーパニの漁師はチュニジアからクスクスを持ち帰って、売れ残りの魚で作ったスープと一緒に食べ始めた。こうして「クスクス・トラパネーゼ」が誕生。

クスクス・トラパネーゼの作り方

クスクスを手打ちで作るのは「儀式のようなもの」でセモリナ粉と水を混ぜることから始まる。

混ぜるときに使うのは「マファラダ mafaradda」っていう平たくて底の浅い陶器のボウル。この上に広げたセモリナ粉に少しずつ水を加えながら、小麦が分離して小さいつぶつぶになるまで、ゆっくりゆっくり混ぜていく。

この、水と粉を一緒にすることを「インコッチャーレ incocciare」って言うんだって。

いっぺんにたくさん作れないから、何回も同じように小さいつぶつぶになるまで、ゆっくりゆっくり混ぜていく…。

長い時間をかけて、クスクスが誕生したら少し乾燥させて、専用の蒸し器で蒸していく。

このときに登場する蒸し器が、その名も「クスクシエラ couscoussier」。

クスクス トラパネーゼの作り方

クスクシエラ

2段になっていて、上の容器にクスクスを入れて、下の鍋にはスープを入れるようになってる。クスクスを入れる容器の底には穴が開いていて、下からの蒸気が伝わる、っていう仕組み。

伝統的なクスクシエラは陶器で作られていたらしいけど、今は金属製のものも多いみたい。

ポイントは、蒸すときに特製の魚のスープを使うこと。

このスープは、もともとはトラーパニの漁師が、売れのこりの魚を煮込んだ粗末なスープ。何種類もの魚のアラからとった出汁は色んなうま味がぎゅーって詰まってたんだろうな。おいしそう。

今では、地中海でとれたての新鮮な魚を使うみたいだけど、やっぱり白身魚を中心に、甲殻類とか貝とか、何種類も混ぜて作るんだって。おいしそう。

しかも、ただの煮込みじゃなくて、こしたり、つぶしたりして作った「魚介類のエキスそのもの」みたいな濃厚なスープを使う。おいしそう!

クスクシエラの上下の鍋の間から魚介の香りが逃げないように、小麦と水をねった生地を上下の鍋のさかい目にぴったりとくっつける。

これを、じっくりと1時間以上かけて蒸していく。

これで出来上がりかと思いきや、蒸したあとに鍋の上から布をかけて休ませてあげる。

それから、特製の魚のスープを何回かに分けてクスクスにしみ込ませて、作る人によっては、アーモンドやスパイスで味付けして、やっとテーブルに運ばれる。

魚介の出汁がこれでもか!ってくらいしみ込んだクスクスに、さらに添えてある魚のスープをかけて食べる。まるで、シチリアの海の香りを独り占めするみたいな、最高の一皿。

シチリアの郷土料理としてのクスクス

北アフリカから伝わってきたクスクスが、シチリアでは魚介のスープで湿らせる、独自のスタイルで定着。

北アフリカの人たちの食べ方とはぜんぜん違う。この料理は、まるでシチリアの歴史そのもの。

シチリアは、地中海のほぼまん中にある、地中海でいちばん大きな島。

歴史的に、たくさんの民族がやって来て、たくさんの足あとをのこして行った。

ギリシャ人、アラブ人、ノルマン人、フランス人、スペイン人…。色んな民族に支配されながら、世界の交流地点として栄えてきた歴史のあるシチリアは「文明の十字路」とかって呼ばれてる。

色んな民族の文化が、シチリアの食文化を色あざやかにしてる。

シチリアの食文化は、色んな文化が混ざりあった、豊かな料理。

イタリアでいちばん大きな州のシチリアは、東岸、西岸、内陸でそれぞれに独自の郷土料理を持っていて、クスクスは西岸の名物料理。トラーパニやマルサラ、マザラ・デル・ヴァッロっていう町の近くでしか「シチリア・トラパネーゼ」は食べれないんだって。

魚介のクスクスはシチリアとアラブの文化との融合。

それは、新鮮な魚介類っていう素材に恵まれたシチリアならではの魚介のエキスたっぷりのクスクス。

たくさんの民族との長い歴史のなかで、色んな文化と融合してきたシチリアを代表してるみたい。

クスクス・フェストとは?

クスクスがどれだけシチリアで愛されているかを知ることができるイベント。それが「クスクス・フェスト」!

シチリア西海岸のリゾート地で「イタリアで最も美しい」っていう、透き通った海と白いビーチの美しい海辺の町「サン・ヴィート・ロ・カーポ San Vito Lo Cspo」で毎年9月に開催。

このお祭りには、色んな国から色んな民族の人が集まって、各国のクスクス料理、ベルベル人のテントのビーチ、コンサートやダンスでシチリアを盛り上げるんだって。

ずらっと並ぶ屋台にはお昼から深夜まで、40種類以上のクスクスとシチリアドルチェ、シチリアワインが盛りだくさん。

メインイベントは「クスクス選手権」!

世界中から集まったシェフが「地中海の交差点」のシチリアに集まって、競い合うっていうより、団結するっていう雰囲気で多種多様なクスクスを作り出す。

ヨーロッパだけじゃなくて、アフリカや、パレスチナやイスラエルも含む、地中海全体の民族たちの平和と統合を願いながら、踊って、食べて、楽しく過ごすお祭り。

クスクスとシチリアは、今でも色んな民族の架け橋になってるんだね。

まとめ

  • イタリアのクスクスは北イタリアからシチリアに伝わり「シチリア・トラパネーゼ」という魚介のクスクスとして郷土料理になった。
  • 「クスクシエラ」という専用の陶器で蒸したクスクスに、魚介のエキスが凝縮したスープをしみ込ませる、シチリア独自の料理。
  • さまざまな文明の影響を受けてきた歴史のなかで、アラブとの文化の融合から生まれたシチリアを代表する料理。
  • 毎年9月開催のクスクス・フェストは、地中海の人びとの交流の架け橋。

時間をかけて、小さなクスクスを作るときの合言葉は「ピアーノ ピアーノpiano piano」

「ゆっくり、ゆっくり」

うまくいかなかったときに「ピアーノ ピアーノでいいんだよ」って言ってくれた

優しい料理人を思い出す。

動画でも詳しくお話してます。合わせるワインもこちら↓

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