ティエッラとは?~ スペインから伝わった?イタリア料理~

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ティエッラとは?

ストーリーが欲しい…。

久しぶりの再会。乾杯で大いに盛り上がって、前菜を食べながらの近況報告。

永遠に絶えることがないと思えたおしゃべりも、やがて落ち着いてくるもの。

このテーブルをさらに盛り上げるためには、ここでストーリーが欲しい。

サービス力なんて関係なくなるような、料理のストーリーが。

ティエッラ、頼む!

ポイント

  • ティエッラは調理する器の名前が由来で、プーリア州とラツィオ州の郷土料理として有名。
  • プーリア州のティエッラ「テリア・ディ・パターテ・リーゾ・エ・コッツェ」はじゃがいもとお米とムール貝を層にして焼く。スペインのパエリヤが伝わったという説が有力。
  • ラツィオ州のティエッラ「ティエッラ・ガエータ」は、具材をはさんだ円形のフォカッチャのような形のストリートフード。

こんな感じかな?

2種類の違うティエッラ

この料理名、ただでさえ日本じゃあんまり耳にしないのに、なんか地域によって色んなバージョンがあるらしくて、よけいに実態がぼやっとしてる。

ティエッラっていうのは、調理するときに使う鍋みたいな入れ物の名前で、それがそのまま料理名になってる。

だから、地域によって入れる食材が違って、米を入れてもフォカッチャを入れても、この入れ物を使えば「ティエッラ」って呼ぶんだとか。や、ややこしい…。

でも、有名な郷土料理は2種類。

プーリア州の「テリア・ディ・パターテ・リーゾ・エ・コッツェ」と

ラツィオ州の「ティエッラ・ガエータ」

これさえ覚えておけば大丈夫。

プーリア州の「テリア・ディ・パターテ・リーゾ・エ・コッツェ」

プーリア州で有名な郷土料理といえば、耳たぶの形のパスタの「オレッキエッテ」。菜の花に似た野菜の「チーマ・ディ・ラーパ」と和えるのが定番。

イタリアの人に、次に有名な料理は?って聞いたら、かえってくる答えが、きっと「ティエッラ」。

プーリア方言では「テリア Teglia」っていう鍋みたいな入れ物で作るオーブン料理。

Teglia(Tiella またはTaieddrha) di patate,rizo e cozze テリア ディ パターテ リーゾ エ コッツェ (ティエッラまたはタイエッダ)

鍋に米、ムール貝、トマト、パセリ、ニンニクなどのみじん切り、ジャガイモのスライスなどを層にしていき、水分を満たしてオーブンで焼き上げるリゾット。

『イタリア料理検定教本2019年度』料理出版

「パターテ patate = じゃがいも」「リーゾ rizo = 米」「コッツェ cozze = ムール貝」。

イタリアのブーツのちょうどかかとの辺り、プーリア州のバーリっていう街の名物料理。

具材はいくらでもアレンジできちゃうから、バリエーションはたくさんあるけど、伝統的にはお米とムール貝とじゃがいもとトマトを重ねてオーブンで焼くのが定番。

平地が多くて恵まれた地形のプーリアは農業が盛んで、じゃがいもはたくさんできる。

バーリから南に下ったターラントの街ではムール貝の養殖が有名。

こだわりは、ムール貝を開いて身がのっている方だけを使うことで、生のまま半分に割るときにムール貝のエキスをこぼさないようにするのが難しいんだとか。

ルーツはパエリヤ?

プーリア州のティエッラは、スペインのパエリヤが伝わったっていう説が有力。

ティエッラは鍋の名前が料理名。パエリヤも、実は鍋の名前が由来らしい。

両方、お米と具材を1つの鍋に入れて作る。確かに似てるかも。

プーリア州はもともと、イタリア統一前は南イタリアにあった「ナポリ王国」っていう国の1部だった。

15世紀の後半からは、シチリア王国と一緒にスペインの王様が支配したから「両シチリア王国」って呼ばれるようになった国。

15世紀からずっとスペインの支配を受けていた国だから、そのあいだに、パエリヤが伝わったとしても不思議じゃないよね。

南イタリアでめずらしく米を使う料理っていうのも、パエリヤの影響から?

パエリヤはスペインの東海岸、バレンシア地方にアラブ人が伝えた料理。バレンシア語で「フライパン」っていう意味のパエリヤ鍋を使って作られていたのが、他の地方にはそのまま料理の名前として伝わったんだって。

もともとは、ありあわせの材料と一緒にお米を炒めて作った料理で、鶏肉とか、うさぎ肉とか、豆類を入れるのが定番。

さすがイタリア人。他の国からやってきた料理を、プーリア州の名産品のムール貝やじゃがいもを’重ねる’アレンジで、自分たちの郷土料理として定着させちゃったってことか。

ちなみに、じゃがいもやトマトがイタリアに入ってきたのは、コロンブスの新大陸発見後だから、ティエッラは16世紀以降に生まれた料理。

コロンブスといえば、リグーリア州出身なのに「黄金の国ジパングを発見できる!」根拠をスペインのイサベル女王にプレゼンして、スペインをスポンサーにして航海した、今でいうやり手のフリーランス。

コロンブスが発見したのは新大陸=アメリカ。

だけど、死ぬまでインドと勘違いしてたから、発見されたものにはことごとく「インドの India」っていう形容詞がついててややこしい。

アメリカ先住民は「インディアン Indian」。

今は「ペーペ pepe」って呼ばれているコショウ は、もともと「ぺーぺ・ディンディア pepe  d’India =インドのコショウ」

「タッキーノ tacchino =七面鳥」は、もともと「ガッロ・ディンディア gallo d’India =インドのオンドリ」

サボテンはいまだに「フィーコ・ディンディア fico d’India=インドのイチジク」

コロンブスったら、やれやれ、だね。

ラツィオ州の「ティエッラ・ガエータ」

ラツィオ州の「ティエッラ・ガエータ」

ティエッラ・ガエータ photo by Letizia Palmisano

ラツィオ州のティエッラは雰囲気がガラリと変わる。

鍋の底にパン生地を敷いて、そこに具材をのっけて、上からもう1枚の生地をかぶせて、周りを指で押さえてとじて焼く。ピッツァとカルツォーネを足したような料理。

こっちも、具材のバリエーションはたくさんあるけど、定番はタコにオリーブ、タラ、玉ねぎと、スカローラっていう、葉の大きなエンダイブの仲間。

こだわりは「ガエータ・オリーブ」を使うことと、周りを指で押さえて閉じて、独特の波のかたちを作ること。

ガエータって、ラツィオ州の南の方の、ローマとナポリの中間くらいの岬にあって、昔はナポリ王国の1部だった街。

イタリア統一戦争の最後の要塞になった、歴史にも名前が出てくる重要な場所らしいんだけど、ここで1番有名な料理が「ティエッラ・ガエータ tiella gaeta」

ストリートフード的な扱いで、食べるときにナイフやフォークは必要ないし、持ちはこびも簡単。何日かに分けて食べることができてとっても便利。具材によってはヘルシーにもなる、地元の自慢料理なんだって。

ティエッラ・ガエータに欠かせない「ガエータ・オリーブ」

ガエータオリーブとは?

ガエータオリーブ photo by Patrizia Miceli – Via delle rose

ティエッラ・ガエータに欠かせないのが、ガエータ・オリーブ。

イタリアの代表的な黒オリーブの1つで、生食用とか料理用といえばこれ、っていうくらい人気者のオリーブ。

ガエータ・オリーブとは言っても、作られているのはガエータのすぐ北にある「イトリ Itri」っていう場所。

イトリのオリーブだから、品種名は「イトラーナ」っていうけど、近くのガエータ港から出荷されてるから「ガエータ・オリーブ」として広まってるらしい。

ふっくらとした肉厚で、オリーブ本来の風味が強いガエータ・オリーブは、ティエッラ・ガエータだけじゃなくて、ナポリ料理にもひんぱんに登場。「プッタネスカ」もガエータ・オリーブを使うのが本格的なんだって。

ガエータの名前がついた料理に、ガエータの名前がついた材料。いいね。

ナポリ王も大好きだったティエッラ・ガエータ

ティエッラ・ガエータを最初に作ったのは、地元の主婦っていう説が有力。

ガエータで飢饉が起きたときに、貯蔵庫に残っていたものを即席のパスタ生地で包んで調理して、みんなで分け合って食べたのがはじまりなんだとか。

もう1つ、語り継がれているのが、ナポリの王様が作ったっていうはなし。

その王様は「フェルディナンド4世」っていう18~19世紀にナポリを治めた人で、なんていうか、かなりの愛されキャラ。

ナポリで生まれて、ナポリで育った国王。

小さいときから下町の庶民と遊んで、魚をとっては市場で売っていたとか、劇場で手づかみでスパゲッティ(ヴェルミチェッリ)で食べていたとか、色んな伝説を持っている人。

パスタ用のフォークを開発した人物としても有名。

当時、スパゲッティは手づかみで食べるものだった。だから宮廷でも手づかみで食べていたところ、奥さんのマリア・カロリーナ(マリー・アントワネットのお姉さん)に「お行儀が悪い!」と怒られてパスタを巻けるフォークを作らせたんだとか、なんだとか。

この王様がいつものように、下町をぶらぶらと歩いていたときに、パン生地の準備をしている女性を発見。

「何かお手伝いしましょうか?」と声をかけたところ、女性は王様にパン生地をのばして鍋(ティエッラ)に入れるようにお願いした。これが、ティエッラ・ガエータのはじまり…。

このエピソードが本当なのかは分からないけど、王様はティエッラ・ガエータが大好きで、庶民に混じってティエッラ・ガエータが作られる様子を見学していたんだって。

まとめ

  • ティエッラはもともと調理用の鍋の名前だったのが、そのまま料理名として定着した。
  • プーリア州の「テリア・ディ・パターテ・リーゾ・エ・コッツェ」とラツィオ州の「ティエッラ・ガエータ」が有名。
  • 「テリア・ディ・パターテ・リーゾ・エ・コッツェ」はじゃがいもと米とムール貝を重ねてオーブンで焼く。南イタリアがスペインに統治されていた時代に、パエリヤが伝わったと言われている。
  • 「ティエッラ・ガエータ」は2枚のパン生地で具材を包んだストリートフード。ガエータオリーブを入れるのがポイントで、ナポリ王「フェルディナンド4世」もファンだった。

お金持ちも貧乏人も、天才も凡人も、料理人もサービスも、みんなティエッラの中の具材みたく、仲良く暮らせたらいいのにね。

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