ティラミスとは?~知られていない起源と本当のレシピ~

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ティラミスとは?

だれもが1回は食べたことがある、イタリアンドルチェの定番。

思い浮かぶのは、やわらかくて甘いマスカルポーネクリームと、コーヒーとココアパウダーのほろ苦さ。

単純なドルチェに見えるけど、さて、あなたが大好きなティラミスのそのレシピは、誰のもの?

イタリアでも大人気のティラミスは、そのルーツとレシピについて長いあいだ、熱い戦いがくりひろげられてるんだって。

ティラミスの語源

イタリア料理って、日本語にすると思いがけない意味があると知らされることがある。

「アクアパッツァ = 狂った水」とか「ポッロ アッラ ディアボラ = 若鶏の悪魔風」とか「アッラビッアータ = 怒りんぼ風」とかね。

ティラミスもこいつらの仲間で「ティラミス = 私を引っ張って = 私を元気づけて」っていう意味。

「ティラ Tira = 引っ張る」「ミ mi = 私を」「ス su = 上に」

栄養たっぷりのティラミスが、小さな子供たちとか、妊娠中の女性とか、授乳中のお母さんを元気づけてきたっていうのと

女の子が男の子を誘ってるような大人なネーミングっていう2つの意味で解釈される。(「私を引っ張って → 私を連れてって」ってこと)

このネーミングの効果もあって、ティラミスは誕生してからあっという間にイタリアを飛びこえて世界中に広まった。

ティラミスはどうやって誕生した?

ティラミス生誕の地として名乗りをあげているのが2つのレストラン

  • ヴェネト州のトレヴィーゾ Trevisoの老舗レストラン「ベッケリエ Le Beccherie」(2014年に一度閉店し、現在はモダンなビストロとして営業再開)
  • フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のトルメッツォ Tolmezzoのホテルレストラン「ローマ Roma」

トレヴィーゾの老舗レストラン「ベッケリエ」発祥説

トレヴィーゾの中心にあった、老舗レストランのベッケリエ。

ここでティラミスが誕生したのは1970年代のこと。

オーナーのアルバさん(Alba di Pillo)は男の子を出産したばかり。

体が弱っていて元気がなかった彼女のために、義理のお母さんが作ったのが

「卵黄と砂糖を混ぜ合わせて、少しのマスカルポーネチーズを入れた、特製の卵クリーム」

それに「これを足すと元気が出るわよ」って言って、少しのコーヒーを添えてくれた。

しばらくして、レストランの仕事に復帰したアルバさんは、パティシエと一緒にその特製レシピを、レストランのメニューとして再現した。

そのパティシエとは、ロリ リングアノット氏(Roberto Loli Linguanotto)。

ヴェネツィア出身で、ドイツでの修行を経て、ベッケリエのキッチンに入った。

彼の、幼いころの思い出の朝食は「sbatudin スバトゥディン」という、卵黄と砂糖をホイップしたもの。

スバトゥディンは「復活のベネチアンクリーム」って呼ばれていて、ベネチアの田舎の人がいつも作っていたレシピ。ベネチアの子供の朝のはじまり。思い出の味。

彼はスバトゥディンに、ドイツで人気があったスプーン菓子のアイディアを加えて、ティラミスを作り出した。

「ティラミス」と名付けたのは、コーヒーを加えたことから。

コーヒーはその昔、食べるとすっきりして元気がでる魔法の豆って言われてたんだって。

アルバさんのお義母さんが言った「元気になって」っていう言葉と、一緒に添えたコーヒーが、ティラミスに欠かせない材料になった。

ベッケリエが発表してから、その素敵な名前と一緒にまたたく間に人気になったドルチェ。

たくさんのシェフが食べに来て、イタリア中でコピーされた。

そこから世界に広まる速度は、はやい、はやい。

発祥地はうやむやになっちゃうし、本来と違うレシピが普及したりして

オーナーは、名前とレシピの特許を取っておかなかったことを後悔してるんだって。

ベッケリエのティラミスは、子供の朝食「スバトゥディン」がベースにあるから、アルコールは入らないのがポイント。

トルメッツォのホテルレストラン「ローマ」発祥説

ヴェネト州のベッケリエで誕生したと信じられていたティラミス。

その定説をくつがえしたのが、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州にあるホテルレストラン「ローマ」で発見された1950年代の手書きのレシピ。

ホテルのあるトルメッツォは、北イタリアのオーストリアやスロヴェニアに近い山岳地帯のふもとにあって、ハイキングやスキーをするお客さんに人気の場所。

ここのオーナーシェフのノルマ・ピエリさん(Norma Pielli)は、当初「トリノ」っていうドルチェを作ろうとしていた。

「トリノ」は通称「アルトゥージの料理本」にのっていたレシピで、イタリア中北部で人気のあった「ズッパイングレーゼ」をアレンジしたもの。

※「アルトゥージの料理本」=イタリア料理の父と言われる美食家で作家のペッレグリーノ・アルトゥージ Pellegrino Artusi のレシピ集。イタリア各地(中北部中心)の郷土料理をはじめて出版して大ヒットした。正式名称は「厨房の科学と美食学 La scienza in cucina el’arte di mangiar bene」。

ノルマさんは、スキー客が疲れていても食べやすいようにレシピをちょいちょい変更。

バターをマスカルポーネチーズに変更。リキュールをコーヒーに変更。チョコレートをココアパウダーに変更。

すると、現在のティラミスとほぼ変わらないドルチェが完成。

はじめは「マスカルポーネスライス」っていう名前で出していたんだけど

ホテルの常連スキーヤーが、1日を雪山で過ごしてへとへとでも、その美しいドルチェを食べると元気づけられる、という理由から「ティラミス」と命名。

この、手書きのレシピが発見されると、イタリア政府はティラミスの発祥地をフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州と認定。ティラミスはフリウリの、伝統的な特産品として公式に認定された。

でも、ベッケリエ発祥説を信じているヴェネト州は認めてないんだって。

ホテルレストラン「ローマ」のティラミスは、リキュールをコーヒーに変更したからアルコールは入らないのがポイント。

ティラミスにアルコールは入らない?

ティラミスの発祥と言われている2つのレストランのレシピには、マルサラワインが入ってない。

これは意外。だって、ティラミスと言えば、マルサラが大事な材料の1つじゃないの?

確かに、世界で有名な「ティラミス」には生地にひたすコーヒーや、重ねるクリームにアルコールが入ることになっていて、マルサラに限らず、ラムとかブランデーとかアマレットやデザートワインを使うレシピもある。

生地とクリームを重ねるドルチェは、ティラミスよりずっと前に「ズッパイングレーゼ」が誕生してる。

ズッパイングレーゼは生地をアルコールでひたす。だから、同じような作り方をするティラミスにもアルコールを使うっていうのは自然な発想。

元祖ティラミスには使われてなかったけど、アルコールを入れることでコーヒーの香りとバランスがとれるとか、より洗練された仕上がりになるとか、アルコール支持者はとっても多いみたいだよ。

入れるか入れないかは、パスティッチェーレ(パティシエ)の気分次第?

本当のティラミスのレシピ

政府が別の州を認定してるにもかかわらず「ティラミス発祥の店」として今でも有名なベッケリエの「元祖ティラミス」のレシピがこちら。

材料(12個分)

  • 卵黄12個
  • 砂糖500g
  • マスカルポーネ1kg
  • サボイアルディ60ピース
  • 濃いめのコーヒー
  • 無糖ココアパウダー
  1. 濃いめのコーヒーを入れて冷ます。待っている間に卵黄に砂糖を加えてふわふわになるまで軽く泡立ててから、マスカルポーネチーズを静かに加えて、滑らかなペースト状になるまで混ぜる。
  2. コーヒーが冷めたら、サヴォイアルディに1つ1つ塗っていく。しみ込ませすぎないように気をつける。
  3. 円形の皿の中央に2.のサヴォイアルディを並べて、クリームの半分をその上に広げる。残りのサヴォイアルディを上から並べて、残りのマスカルポーネクリームを塗る。
  4. ふるいにかけたココアパウダーをたっぷりとまぶして、提供するまで数時間、冷蔵庫で冷やす。

ティラミスはヨーロッパで5番目に有名なイタリア語。

1位は?

ピッツァ!

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